最後の挑戦。専門外ドメインの提案書をAIフル活用で作って見えた「AI駆動の限界とリアル」
「最後の挑戦として、AIプロンプト課を作りたい」
そんな熱い思いを上司にぶつけた夏から、少しの時間が経った。
現在、私が直面しているAI駆動開発における最大のテーマは「AIと協業できるか」、それとも「AIに振り回されるか」
今回はその後者として、今週取り組んだ「自分の専門ドメインではない領域の提案書を、AIをフル活用して作成した話」を記事にしてみたいと思う。結論から言うと、AIで前向きに提案書を作成するという非常に価値のある経験ができた一方で、背筋が凍るような不安と「責任の所在」について深く考えさせられる結果となった。

AI駆動による提案書作成ワークフロー
今回、私が構築・実践したAIによる提案書作成のプロセスは以下の通りだ。人間が手を動かす部分を極力減らし、AIのエージェントやスキルを連携させることに注力した。
RFPの解析と抽出
- RFP(提案依頼書)をAgentSKILLでマークダウン化。
- そこから顧客が求める「課題」と「要求」を正確に抽出する。
- さらにAgentSKILLを活用し、RFPにおける問題点や確認すべき事項(Q&A)を重要度別に抽出し、Q&Aシートへ転記するAgentSKILLを実行。
- アーキテクチャ設計と見積もり各領域に対して、RFPに準拠したアーキテクチャ図を生成。
- 生成されたアーキテクチャ図を確認し、AWSの構成図に置き直して自分自身の理解を深める。
- 書き出した内容、アーキテクチャ図、単価表を元に「見積もりSKILL」を実行させ、見積書を生成。
スライド資料の生成
- 提案書のアウトラインに従い、各スライドで求める内容をセクションごとにマークダウンで生成指示。
- 各セクションの内容は、GEMSPARKに生成指示を出させる専用スキルを作成してバンバン生成指示を実行。
- すべてのスライド原案が作成された後、AIにファクトチェックとデザインチェックを専用スキルで指示。
人手による補正と多角的なレビュー
- スライドをPPT(PowerPoint)で出力後、個別の補正作業を人の手で行う。
- 出来上がったタイミングで、「提案書レビュースキル」を実行。
- RFPに準拠しているかを再確認。
- このレビュースキルには、「カスタムエージェント」「PM視点」「経営者視点」という複数の役割を与え、多角的なチェックを実施。
- 提案資料にパワポにノート(説明)をAgentSKILLを作成して追加。
【所要時間】
スライド生成(約30ページ):約8時間(生成指示出しから初期版完成まで)
人手によるレビュー:約X時間(実現性チェック、矛盾箇所の確認、RFP準拠の確認などど現在も対応中)
直面した壁:「正しく評価できない」という恐怖と責任の所在
AIを駆使することで、たった数日で30ページにも及ぶ提案書のベースが完成した。スピード感は圧倒的だ。しかし、この提案ドキュメントを作成しながら、私はかつてないほどの「成果物を評価できない不安」に襲われていた。
「この提案の責任の所在は、一体どこにあるんだ?」
今回は私の専門ドメインではない領域の提案だった。そのため、AIがもっともらしく出力したアーキテクチャや解決策の「実現性」を、私自身が正確に評価できないのだ。
AIは、人間がイメージできないような生成物であっても、いとも簡単に「できる」ように仕立て上げてしまう。これはリスクだらけの提案だ。
理解できない記載や、実現性が疑わしい箇所は容赦なく削除した。あるいは、「強い推測値に基づく」といったエクスキューズを追記せざるを得なかった。
PPT化された提案書は、デザイン的にはとても綺麗に仕上がっている。しかし、中身をよく見ると、根拠や過去の実績に基づいた意思の通った提案ではないため、言葉の端々から「構築力のレベル(の浅さ)」が透けて見える可能性が高いと感じた。
「これは〇〇な時間だったかもしれない……」
作業中、そんな思いが頭をよぎったのも事実だ。
まとめ:AI時代における「提案」の最適解とは
AI駆動による提案書作成は、確かに短期間で形にすることができた。
しかし、そこにはAI駆動開発と全く同じ課題が横たわっている。
「提案書が本当に正しいのか」
「依頼側の目的や真の課題に即した内容になっているのか」
今回、私はAIにプロンプトを投げて提案書を作成したが、ドメインが違うため生成物の「実現性評価」ができなかった。さらに、RFPを出した顧客との直接の接点がないため、行間にある「依頼側の目的・課題」に本当に即しているかの評価も不可能だった。
これらの経験から得た結論はこうだ。
いくらAIが優秀になっても、提案書作成においては「担当ドメインの有識者が、顧客の意図(コンテキスト)をよく聞いた上で、AIをツールとして駆使して作成すべき」であるということ。専門知識と顧客への共感がなければ、AIの出力はただの綺麗な文字列に成り下がってしまう。
私がAIと振り回して作り上げたこの提案書のベースが、ドメイン有識者によるチェックとブラッシュアップされ、血の通った提案へと昇華されることを、今は唯々祈るのみ。
そして、あと、「AIで提案しよう!」とAIで何でもできると思われている方は、考えなおすべき。
そして、AIプロンプト課(仮)の設立への道は、まだまだ険しく、そして面白い。